写真集「長崎の痕」を広める会
「写真集「長崎の痕」を広める会」について
写真家・大石芳野さんは、長崎で7万人を超える犠牲者を出し、生き残った被爆者の体と心に深い傷跡を残した原爆の残酷さ、それをもたらした戦争の酷さを若い世代に伝えるため、被爆者たちと共に、長崎県内外の学校(長崎県内では全ての小中高校、大学)に、写真集「長崎の痕」(藤原書店刊)を寄贈することにしています。
この取り組みは、子どもたちに原爆の被害を数字ではなくリアルに伝えたいという被爆者と大石さんの双方の思いから生まれました。
大石さんの取材を受けた被爆者有志らは、2019年5月に写真集「長崎の痕」を広める会を結成しました。広める会では、長崎県内だけでなく全国に呼びかけて寄付(目標500万円)を募っています。
ぜひご賛同、ご協力をよろしくお願いいたします。*写真集寄付活動についての新聞紹介
『長崎新聞』2019年9月8日呼びかけ人(共同代表)
- 朝長万左男(長崎大学名誉教授、長崎県被爆者手帳友の会会長)
- 髙見三明(カトリック大司教)
- 宮川雅一(元長崎市助役)
- 本田孝也(長崎県保険医協会会長)
- 川野浩一(長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会議長)
- 田中重光(長崎原爆被災者協議会会長)
写真集『長崎の痕(きずあと)』について
フォトジャーナリストによる20余年にわたる取材の成果
1945年8月9日11時2分、何が起こったのか――最新の撮り下ろし220枚!
広島・沖縄・ベトナム・ラオスなど国内外の戦禍の傷を抱えた人びとを捉えてきた写真家が、戦後74年の今、長崎の失われた命に目を凝らし、被爆者たちの記憶と想いを受け止める。解説=朝長万左男 英訳=ブルース・アレン
四六倍判変型 並製 288ページ
ISBN-13:9784865782196 刊行日:2019/03発行元:藤原書店
★メディアでの紹介
大石芳野(おおいし・よしの)
東京都出身。写真家。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、ドキュメンタリー写真に携わり今日に至る。戦争や内乱、急速な社会の変容によって傷つけられ苦悩しながらも逞しく生きる人びとの姿をカメラとペンで追っている。2001年土門拳賞(『ベトナム 凜と』)、2007年エイボン女性大賞、同年紫綬褒章ほか。
◉近著
『〈不発弾〉と生きる 祈りを織る ラオス』(藤原書店、2008年)
『福島FUKUSHIMA 土と生きる』(藤原書店、2013年。第56回JCJ賞)
『戦争は終わっても終わらない』(藤原書店、2015年)『戦禍の記憶』(クレヴィス、2019年)
写真集『長崎の痕』より
〈ある晴れた日に〉
〈ある晴れた日に〉、アメリカ海軍士官のピンカートンを乗せた一隻の船が長崎に入港する。蝶々夫人は待ち焦がれた夫が帰ってくると胸をときめかせ、高らかに歌い上げる。プッチーニのオペラ『蝶々夫人』(1904年)の有名なアリアだ。蝶々夫人は、夫に見捨てられたことも知らないまま彼を信じて幼い息子を育てながら待ち続け、結局、息子を夫とアメリカ人妻に託して自害する。悲しい物語だ。
それからほぼ半世紀後の〈ある晴れた日に〉、北東の空からアメリカ軍機が飛んできた。晴れ渡った長崎の青空のなか、急降下したそのB29は、目的を遂行して去って行った。警戒警報も鳴らされなかったために、人びとは、上空500mという間近からもう一つの太陽に晒された。火の玉は直径100mもあり、30万~100万度に達したと推定されている。
西欧文化を受け入れて豊かな精神を育み、つつましく暮らしていた市民にアメリカが落とした原子爆弾の惨劇は余りにも深刻だ。当時の長崎市民は約21万人、うち約15万人が瞬時に死傷したから、3人に2人がやられた。その後も原爆症で次々に亡くなり、今や18万人以上が鬼籍に入った。
長崎の〈ある晴れた日〉の悲劇から50年、いや70年、いや90年……、人びとは暗黒の記憶と蝕まれる身体と闘わなければならない日々を生きている。当人のいのちが果てても終わるものではなく、さらに苦悩は続く。子や孫に、曾孫に、そして関係者や私たちにも。終わることがない果てしない記憶が、どこまでもどこまでも追いかけてくる。「あの日、子どもだった。」
ここに写っている人たちはほとんどがお年寄りだ。けれど単に歳をとった人たちを集めたのではない。この人たちはあの日、まだ子どもだった。赤ちゃんだったり、若者だったり、さらにお腹の中にいたり……。そうした一人ひとりに、七〇年以上の歳月が経った。そしてみなお年寄りになった。あの日のあの瞬間がなければ、子どもは元気よく走り回ったろうし、赤ちゃんは母の胸に抱かれたろうし、若者は青春を謳歌しただろう。
恐怖をその身に植え付けられた彼らは、家族や親しい人たちが次々に亡くなる様を目にし、苦しみや嘆きも幼い耳で聞いた。怪我もなく火傷もしなくて喜んでいた人も、見る見るうちに容態が悪化して、遠いところに逝ってしまった。
三六五日×七十余年、毎日、毎日、次は自分かもしれないという不安にさいなまれてきた。なぜ自分ではなくあの人が先に旅立ったのかとも思う。たぶん、生かされているのだろう。それでも、日々、恐怖や不安は片時も離れることがない。見た目には元気そうでも、心も体も闇のように暗くてぼろぼろになった。
もはや老年に至った彼ら一人ひとりと向かい合い、あなた自身やあなたの大切な人と重ねて見てほしい。
(大石芳野/写真集『長崎の痕』より抜粋)寄付のご入金先
ゆうちょ銀行 総合口座
記号 17640 番号 26280291
名義 写真集「長崎の痕」を広める会
(シャシンシュウナガサキノキズアトヲヒロメルカイ)
長崎銀行
本店(店番号100)
口座番号 8008030
名義 長崎の痕(ナガサキノキズアト)寄贈活動の現状
2019年11月12日 長崎市の小中学校への贈呈式が行われました(計151冊)。(NHKニュース)
2019年11月13日 西海市の小中学校への発送を行いました(計25冊)。
2019年11月14日 諫早市の小中学校への発送を行いました(計56冊)。
2019年11月21日 佐世保市・島原市の小学校への発送を行いました(計54冊)。
2019年11月22日 大村市の小学校への発送を行いました(計15冊)。
2019年11月25日 平戸市・松浦市の小学校への発送を行いました(計24冊)。
2019年11月26日 対馬市・東彼杵郡の小学校への発送を行いました(計27冊)。
2019年11月27日 壱岐市・五島市・西彼杵郡の小学校への発送を行いました(計36冊)。
2019年11月28日 雲仙市・南松浦郡の小学校への発送を行いました(計29冊)。
2019年12月6日 長崎県内の公立中学校、義務教育学校への発送を行いました(計222冊)。2019年12月12日 長崎県立の高等学校、盲学校、ろう学校、特別支援学校への発送を行いました(計144冊)。
2020年1月15日 長崎県内の大学・短期大学、国立・私立の小・中・高等学校・特別支援学校、専修学校・各種学校への発送を行いました(計121冊)。
2020年2月6日 長崎県内の高等専門学校への発送を行いました(計2冊)。以上をもって、長崎県内の全学校への送付を行うことができました。御協力に御礼申し上げます。
2020年8月6日 長崎市・西海市の小学校への追加贈呈を行いました(計81冊)。お問い合わせ
下記のフォームからご連絡ください
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